迫り来るもの

ある交通量の少ない通り、そこを猛スピードで過ぎていく
人がいた。自転車に乗ったその人は息をきらせつつも
ペダル動かす足を止めようとしない。ズボンから
出しているカッターがバタバタとなびいていた。
緩いカーブに少しスピードを落としたがすぐにまた
速くなる。彼は急いでいた。あるものから逃れる為に――。
「くそっ、急がなきゃ!」
そうひとりごちて、前方を睨む。
もうすぐ信号にあたる、それにひっかからなければ――
そう思った時、少し先の脇道から車が出てきた。
車が来るなどとは微塵にも思っていず、ブレーキを
かける。磨り減ったブレーキの音が耳に響いた。
道の二歩分くらい手前で止まった自転車の前を
ゆっくりと車が過ぎていく。少しつんのめって動きが
止まったことが恨めしい。今のわずかである遅れを
取り戻すように彼はペダルをこぎ始めた。

信号を通ると先ほどの裏道とは違く車が多く行き交う
交差点に出た。彼の目的地、学校までは
あと5分ほどといった距離。距離が減っていこうと、
彼のあせりは消えはしなかった。手が汗ばんでいる。
「早く、門まで行ければ大丈夫だ...」
彼に迫るもの。形こそ無いが、今も彼の背後に迫り、
圧力をかけあせりをあおっていた。時計を見る、
この時間ならば急げばまだ大丈夫、と自分を励ました。
あせらなければならない原因が自分にあると自覚
しているものの、ついイライラしてしまう。
こんなことになるならば――
そう今は思うが家に帰るとまた失敗してしまうんだろう。
そんなことを高校2年生になった今も何度か繰り返していた。
イライラとしていると、最後の信号が目に映った。
青く光る電灯が瞬きを繰り返している。
「うわわわ、あれに遅れたら...本当にまずいぞ!」
今度は冷や汗が背中をつたう。また強くペダルを踏む。
「間に合えーーーっ!」
人が居ないわけでもないのに大声で叫ぶ。本人は急ぐことに
夢中で周りの目に気付かない。迷惑そうな視線が集まる。
点滅が続く中、一台の自転車が飛び出す。
――間に合ったーーーー!!――
心の中でそう叫びガッツポーズ、思わず自転車を放り出し
踊りだしたい気分だった。ここまで来れば学校は
もうすぐ、もう信号に止められる心配もない。
「あぁ、助かりそうだ...今何時だろ?」
安堵し左腕の時計を覗く。
「...え?」

時計を見て、目を見開く。そこには故障でもしたのか、
前見た時から動いていない針があった。
そのショックで開いた口を閉じる間もなく
キーンコーンカーンコーン
チャイムの音が鳴った。さっきまであんなにせわしく
動かしていた足が止まった。しかし自転車はまだ
止まらず流れていく。校門が見える、そこには
中年の男が立っている。こちらの姿を確認すると近づいてきた。
「えー、遅刻だねぇ、君ぃ。クラスと名前を言いなさい。」
がっくりとうなだれる。彼は、
迫り来るもの―時間―に今年何度目かの敗北を喫し、
遅刻という宣告を受けたのだった。




どうも、初公開管理人の小説です。今まで長編を書いてて
一度も公開出来ていないので短編読みきりを書いてみました。
「迫り来るもの」の正体がオチになるように書いて
みたんですが、文章ヘタなんで狙い通りにいって
ないでしょう。推敲もしてないんでそのうち直したり
するかもしれません。楽しかったんでまた
書きたいなぁと思います(下手の横好きですな)


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